骨盤内にある子宮、膀胱、腟、直腸などが本来の位置から下垂して腟から脱出してくる病気の総称を骨盤臓器脱と呼びます。40歳代後半から60歳代に多く見られます。中でも出産回数の多い女性や、長時間にわたる立ち仕事、下腹部に力の入る仕事に携わっている女性がなりやすい病気です。
部分子宮脱
完全子宮脱
腟内にペッサリーを挿入して、子宮の入口にはめ込み、固定して子宮が出てこないようにします。長期間体の中に入れておくと、炎症が起こり、おりものが増えて出血することがあるので、2~3か月に1回は受診して交換してもらう必要があります。
手術の方法は様々なものがありますが、基本的にはゆるんだ腔壁をある程度切除して縫い縮める手術が主に行われてきました。しかしこの手術方法は、そもそも緩んでしまった弱い組織を使って修復するため、高い確率で骨盤臓器脱(性器脱)の再発をしてしまいます。たとえば膀胱脱の従来法による修復術では、1年後再発率が60%といった報告もあるほどです。また腔壁を切除して縫縮するため、腔内腔が狭くなり性交障害の問題が生じることもあります。
※ 当院では骨盤臓器脱の手術を行っておりません。手術が必要となる場合は適切な医療機関を紹介いたします。
2000年にフランスの婦人科医コッソンらは、骨盤臓器脱に対する従来の手術方法の高い再発率を改善させるために、ポリプロピレンのメッシュで弱くなった支持組織を置き換える術式を開発しました。これが Tension-free Vaginal Mesh手術(TVM手術、メッシュ手術)です。TVM手術は、ちょうど外科が鼠径ヘルニア手術において従来法の高い再発率を改善させるためにメッシュ材料を使うようになったのと似ています。TVM手術は日本でも優れた人工材料が市販されるようになり、しだいに広まりつつあります。新しい術式ですので、まだ長期成績はわかりませんが、短期成績は非常に優れており、患者様の満足度も高い手術といえます。
※ 当院では骨盤臓器脱の手術を行っておりません。手術が必要となる場合は適切な医療機関を紹介いたします。